京都御所松平容保

 松平容保、京都守護職を拝命

♪肥後守様、京都守護職つとめます〜♪世の中ようがんす〜

 黒船騒ぎ以来、幕府はその弱体ぶりを露呈することとなった。二百数十年続いた鎖国を自ら破らねばならなくなった焦りから、日々高まる尊王攘夷運動を過剰なまでに弾圧することとなり、それがかえって不満分子の跳梁を許すこととなった。京都において、長州や薩摩、土佐などの不逞浪士によるテロは日に日にエスカレートするばかりだ。幕府がうろたえるまでゆさぶりをかけ、混乱に乗じて自分が一旗挙げてやる、顔に書いてある野望を嘘でも隠すのなら、尊皇だと言えば格好がつく。そうやって日本人の弱点を巧みについて、やりたい放題の乱暴狼藉に京都の人々は畏怖した。一部の者は商店へ押し入って強盗までやる。もう所司代では手に負えなくなってしまった。
 幕府は京都守護職を設置する。何よりも幕府の威信、そして王都の治安回復が急がれたのである。しかしながら、そのような難しい役を一体誰が引き受ける?京都守護職という大任を・・・。火中の栗を拾うようなお役目に、東北の重鎮・親藩会津二十三万石藩主松平肥後守容保に白羽の矢が当たった。会津藩の悲劇の幕開けである。

 会津藩家老西郷頼母は猛反対した。「殿、藩の財政状況は厳しいものがあります、辞退なさるべきです!」
何よりも藩政の安定を第一に、それは藩士・領民の生活にとって当たり前過ぎる配慮だった。しかし藩主松平容保は、藩祖保科正之の家訓〜会津藩はどこまでも将軍家を守護する存在である〜を捨てることは出来なかったのである。ところが藩祖の遺訓をもってしても、頼母は反対を貫いた。「殿、思わぬ政争に巻き込まれる恐れがあります、藩にとって何の得にもなりませぬ!」
 容保はついに頼母を叱責した。既に容保の決意は確固たるものになっている。何の得にもならない京都守護職拝命〜全ては将軍家のため、士道に生きるためであった。

 会津藩京都へ・・・磐梯山のふもとの山河と共に暮らしてきた藩士達は、京都という別世界に戸惑った。雅な風情に嘘があり、妖艶の中に落とし穴がある。人が悪くなければまともに立ち回れないと思われた。日新館で「卑怯なまねをしてはいけませぬ」「弱い者をいじめてはなりませぬ」「ならぬものはならぬものです」などと要領の悪いことばかり教えられてた藩士達。芸者の膝枕でぐでんぐでんに酔っ払い、自分より弱そうな者を天誅で屠った手柄を土産に、コソコソ陰謀をたくらみ、西国大名や政商・公暁にカネをせびってる連中とはまるでどぶ川と磐梯山の雪解け水ほどの違いであった。

鴨川

虚勢を張る尊攘派、苦悩する幕府・・・

 京都守護職松平容保は孝明天皇に拝謁した。孝明天皇は、何よりも公武合体で政治を安定させることで、ハイエナのような欧米列強に対処しようと考えた。長州藩士長井雅楽の「航海遠略策(公武合体に基づく開国論)」を大いにお褒めになっていたが、長州藩は長井を切腹に追いやり、尊攘過激派の牛耳るところとなっている。彼らは、過激派公暁などの倒幕シンパと共に「ゆさぶって幕府を困らせろ!」と不逞浪士達を煽ったのだ。庶民の迷惑を考えるどころか公然と人殺しが横行するばかりである。
 将軍家茂は、過激派公暁連中のそそのかしに端を発した攘夷断行を強要されていた。やめれば裏切り者だとかネチネチいじめられる。かと言って圧倒的な欧米艦隊に対抗できるはずがない。そうやって将軍や幕閣を困らせて立場を弱くすりゃいい。もっとも幕府は生麦事件の賠償問題で苦慮していた。薩摩藩士が引き起こした迷惑な事件の事後処理を穏便に済ますため、カネで解決しようとしたことが、攘夷派をさらに勢いづけることになった。江戸や大阪を火の海に出来る英国戦艦の威力の前にして、必死の和平努力であるはずが、こうした良心的行動も攘夷を叫ぶ連中にしてみれば格好の材料だ。尊攘派に扇動された長州藩は、関門海峡を通過する商船を砲撃、これは日本を戦乱の渦に巻き込む愚挙だった。

 騒乱は広がる一方だ。もちろん孝明天皇はこのような事態を望んではおられない。まさに公武がしっかりと手を結ぶことで、国内が政治的に安定することを望まれたのだ。容保は禁中の期待に応え、断固として尊攘テロリストを抑えこみ、治安を回復させることが使命だと考えたのは、当然のことと思われた。

京都守護職跡地〜京都府庁の敷地内のため、守衛さんに場所を教えてもらいました

京都守護職跡地

↑ぞうきん持ってたら拭いてあげたい・・・。

京都府庁

↑府庁の建物も文化財です。(奥のクラシカルな建物が旧本館)

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北条四郎のホームページ〜「幕末会津藩の悲劇」


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